日本の広告会社で「メディアプランニング」という業務が行われるようになったのは、1990年代からでしょう。私も会社の中に「メディアプランニング」という名前の部署を立ち上げたのは、1994年でした。「メディアプラン」という業務自体は、欧米では古くからあり、日本に進出してきていている外資系の広告会社には、「メディアプランナー」と呼ばれる専門の人があたりまえに存在していました。わたしも、そのような先輩達の仕事をみて、「メディアプランニング」を自分でやってみたいと思ったのがこの仕事を始めるきっかけでした。
じゃあ、日本の広告会社では、広告主企業に広告のプランを提案するときに、メディアでどのような展開をするのかというプランを提出していなかったのかといえば、そうではありません。日本では、営業担当者や、マーケティングの担当者が、媒体の展開案をつくって提出していたことが多いようです。それは、海外で言うところの「メディアプラン」とは異なり、「バイイング」(買い付け)のためのプランであったように思われます。
なぜ、そのような違いがあったのかと言えば、広告主企業のための「代理」なのか、媒体のための「代理」なのかという根本的な違いにたどり着きそうです。
広告主企業と広告会社がパートナーシップを組む欧米の広告業界では、商品やサービスを売るための戦略を一緒に考えていきます。日本の広告主企業と広告会社の間では、一業種一社のようなパートナー性があまりなく、媒体ごとに扱い広告会社を使い分けるようなことが行われてきたため、商品やサービスのメディアプランを総合的に考えるということがあまり行われなかったのです。本来の「メディアプラン」は、広告主企業のマーケティング上の課題を解決するための手段です。媒体を「売る」ための手段とは「目的」が180度逆なのです。
企業が商品やサービスを「売る」という行為は、すべてマーケティング計画に含まれます。製品の開発から、配荷・広告・流通・生活者プロモーション・ダイレクトマーケティング・イベント・PRなどすべての活動です。その中の、広告コミュニケーションに関する部分を、広告会社は請け負っています。
商品やサービスを「売る」ためにどのような、広告コミュニケーションを生活者や企業ととるのか、それを考える仕事が「広告計画」です。広告計画は、大きく分けると「表現計画」と「媒体計画」で構成されています。
広告コミュニケーションにおける媒体活動を規定する計画
と定義することができます。言い換えると、広告計画を上位概念とした広告コミュニケーションに対して、主に定量(人数や回数などの数量で定義できる)的なアプローチを行うのが、メディアプランだといえます。
このように、メディアプランは、トータルな広告コミュニケーションの一環として位置付けられ、広告計画で決められた「広告目標」を達成するために、必要十分な広告コミュニケーションの量を決めなければなりません。また、メディアプランは、現実の媒体環境で展開することができるものでなければなりません。つまり、実際に購入し、実施できるメディアプランを作成しなければならないということです。
なんだか難しく書いていますが、
商品とそれを使う人(または買ってくれる人)に合わせて、
最もふさわしい人に
最もふさわしいときに
最もふさわしい場所で
最もふさわしい方法で
最も効率的に
商品やサービスの情報を届けること、それがメディアプランニ
ングの役割だといえます。
つまり、役割自体はメディアプランニングも、広告コミュニケ
ーションも同じなのです。広告コミュニケーションに携わる多
くの人が、メディアプランニングの考え方を理解するようになれ
ば、企業が直面するコミュニケーションの課題を解決する方法が
生み出せると思うのです。