「視聴率」カテゴリーアーカイブ

「世帯」から「個人」へ。テレビ取引指標が変わるとき、プランニングはどう変わるのかープランニングはどうかわるのかー

  • プランニングはどうかわるのか(気をつけるべき点は何か)

TVスポット取引指標の変更にともない、メディアプランニングにどのような影響がでるのでしょうか。メディアプランニングの7つのチェックポイントの中から、特に影響が大きい以下3点について考えていきます。

  • TVCM投下エリアの決定
  • 予算設定・予算配分
  • キャンペーンのスケジューリング

1.TVCM投下エリアの決定

TVCM投下エリア配分を考える上で、通常は到達率(到達人数)や到達コストなどから投下エリアとエリアごとの投下量を決めていきます。しかし、今回のテレビスポット取引指標変更に伴い、関東地区とそれ以外では買付指標が異なるので、どちらかに換算しないと全国の投下量を横並びで見ることができません。当面は関東のALL P+C7で購入した量をその他の地区に合わせて世帯に換算することになるでしょう。今後仮に関西/名古屋で関東地区と同じように、取引指標にALL P+C7が導入されたときには、逆にその他の地区(関東・関西・名古屋以外の地区)をALL換算することになるでしょう。いずれにせよこれまでよりもプランを作るのに時間がかかるようになりますし、社内でどの指標を使って基準をつくるのか決めておく必要があります。

2.予算設定・予算配分

ここまではTVCMに限って話を進めてきましたが、あるキャンペーンをTVCM(スポットCM)だけで実施することはあまり多くはありません。複数のメディアを複数のエリアで展開することが一般的な中で、それぞれの広告効率を横並びで比較することは容易ではありません。そこで横並びして比較できるように、CPMの考え方を導入する必要が出てくるでしょう。CPMとは1,000人あたりの到達コストを示す指標です。CPMを使うことで、TVCMの関東地区とそれ以外の地区の到達効率を比較したり、TVとDigitalの最適な配分比率を求めたりすることができるでしょう。

3.キャンペーンのスケジューリング

タイムシフトが取引指標に加わることで、自分たちの必要なキャンペーンの期間外に露出されるスポットCMがどのくらいになるのか、あるいは無駄になってしまうのではないか、と気になる人もいるでしょう。実際に集計をしてみたいくつかのケースでは、期間外露出の割合が、投下量全体の0.1~0.2%とごくわずかの量でした。個人的には、ここを気にするよりも、よりふさわしいターゲットを選ぶことやふさわしいクリエイティブを作ることに集中すべきだと考えます。

以上3回にわたって、2018年2月に実施したセミナーでお話しした内容を中心にご紹介してきました。

関西地区では2018年4月から、名古屋地区では2018年7月からテレビ視聴率調査において、タイムシフト計測が始まります。関東地区以外でもタイムシフトの計測が始まることは、いま関東地区で起きている変化が、他の地区にも波及していくことが想定されているでしょう。この変化を前向きにとらえていきたいと思います。

「世帯」から「個人」へ。テレビ取引指標が変わるとき、プランニングはどう変わるのか。ーなぜ取引指標が変更されるのかー

  • なぜこのタイミングに取引指標が変更されるのか

2018年4月から関東地区のテレビスポット取引の指標が変わりました。おさらいになりますが、変わったポイントは以下の2つです。

  • これまで取引使われてきた「世帯」視聴率が「個人(ALL)」視聴率に変わること
  • これまでのリアルタイム視聴率に放送後7日間以内のCM再生視聴率(タイムシフト)が加わること

ではなぜこのタイミングで取引指標が変更されたのでしょうか。

②のCM再生視聴率が加わる点については、海外の取引実態を参考に、価値化されるべきものを正しく計測し、価値に見合う値段をつけることがようやく日本で実現した、と考えることができます。タイムシフト視聴がきちんと計測され視聴率に組み込まれることは、海外では以前から行われてきたことです。その意味では、ようやく日本でも視聴の実態に取引が追いついてきたと言えるでしょう。

①の「世帯」から「個人」に取引指標が変わる点については、変更の本当の意義を考えると、マーケティング全体が、マスマーケティングからCRM(ここではCustomer Relationship Marketingの意味)への転換を求めているからだと言えるでしょう。

ではなぜマスマーケティングからCRMへの転換が求められているのでしょうか。その背景は、いうまでもなく日本の超高齢化です。2001年から2016年までの15年間で、65歳以上の人口は1.5倍になり、M1/F1は27%も人口が減少しているのです。現在のテレビ視聴者の半分近くが50歳以上であり、「世帯」視聴率は、テレビ視聴の実態をうまく反映できていないといえるでしょう。「%」の数字は、その「%」を割り出す集団構成が大きく変化しているため、「%」の数字だけでなく、「実数そのもの」や「実数に換算できる%」を見ていく必要が出てくるでしょう。

「%」だけでなく「実数」を指標に据える動きは、企業側ではすでに行われています。例えば広告効果の指標として、これまで使ってきた広告認知率やブランド認知率などの「%」データだけでなく、自社サイトのアクセス数やSNSのいいね!数など「実数」データを指標にすることが増えてきました。テレビメディアでONEtoONEマーケティングを実施することはできませんが、「世帯」から「個人」、そして「%」から「実数」に評価指標を変えていくことで、顔の見えない「世帯」ではなく、様々なデータを使ってより見込み顧客となりそうなクラスターやユーザー層を見つけていくことができるようになるでしょう。

こうした取引指標の変化やマーケティング活動の変化にともない、メディアプランニングにどのような影響を及ぼすのでしょうか。1つ1つ見ていくと、大小さまざまな影響を及ぼすことが想定できます。実際にどのような影響が出てくるか、具体的に直面しそうなポイントを次回の更新で見ていくことにします。

「世帯」から「個人」へ。テレビ取引指標が変わるとき、プランニングはどう変わるのか ー取引指標のどこがどう変わるのかー

2018年4月から関東地区のテレビスポット取引の指標が変わったことをご存じでしょうか。この変化は、メディアプランニングに大きな影響を及ぼすとともに、関東以外の地区にも波及していくことが予想されます。そのため、Axivalでは2018年2月26日に、

「世帯」から「個人」へ。テレビ取引指標が変わるとき、プランニングはどう変わるのか

というテーマで、広告主様向けにセミナーを開催しました。

セミナーの第1部の講演では、主に

  • 取引指標のどこがどう変わるのか
  • なぜこのタイミングに取引指標が変更されるのか
  • 取引指標変更にともない、メディアプランニングにどのような影響があるのか

についてお話しさせていただきました。また第2部では、テレビ視聴データを保有する株式会社インテージの李様、TVISION INSIGHTS株式会社の郡谷様にご登壇いただき、各社のテレビ視聴データのご紹介と、テレビ視聴データをどうマーケティングデータの活用方法についてパネルディスカッションを行いました。

 

本ブログでは、私がセミナーでお話しした第一部の講演内容を3回に分けてご紹介していきます。

 

  • 取引指標のどこがどう変わるのか

2018年4月から関東地区のテレビスポット取引の指標が変わりました。変わったポイントは2つです。1つ目は、これまでテレビスポット取引で使われてきた「世帯」視聴率が、「個人(ALL)」視聴率に変わることです。2つ目は、これまでリアルタイムでの視聴率のみをテレビスポット取引に利用していましたが、C7と呼ばれる放送後7日間以内のCM再生視聴率(タイムシフト)が加わりました。これをP(リアルタイムの番組平均・終了時、個人視聴率)+C7と呼び、このP+C7がテレビスポット取引指標になりました。

2つの変更の中で、特にC7が新たにテレビスポット取引に組み込まれることは、広告主様側から見れば「値上げ」だと解釈されることが多いようです。しかし、実際にはこれまでも、タイムシフト視聴は行われてきたわけですから、これまで価値に換算されていなかった視聴行動が価値化されて値段がつくようになった、とも解釈ができます。

では、なぜこのタイミングに取引指標が変更するのでしょうか。その背景は、社会全体の大きな変化や、マーケティング全体の考え方の変化など、さまざまな要因が考えられます。次回の更新で詳しく見ていくことにします。

『民放 地上デジタル放送 視聴環境 世帯数調査』ができました

『民放 地上デジタル放送 視聴環境 世帯数調査』ができました!

http://www.jaaa.ne.jp/2015/04/3856/

テレビ広告が基準としている「世帯」の母数を明らかにする調査です。

これまで、地上波の電波がどこまでカバーしているかは、2008年に終了してしまったアドバタイザーズ協会さん実施の「民放テレビ局エリア調査」で調べられていました。ところが、2010年に次の調査が出るかと待っていたら、もう調査はされないとのこと!これは困った。

なぜならば、テレビメディアは「世帯視聴率」をベースに今でも売り買いがなされています。テレビスポットの場合は世帯視聴率1%をいくらで購入するかという取引の単位になっています。関東地区一都六県の世帯視聴率1%と沖縄県の世帯視聴率1%、どちらも単位は同じですが、放送が見られている地域の世帯数は大きく異なります。これまでは、「民放テレビ局エリア調査」によってどの市区町村まで各放送局の放送が視聴できるのかを調べ、その結果に基づいて、それぞれの放送局を視聴することができる世帯数を推定していました。

ところが、2008年の調査を最後に実施されなくなってしまったのです。2年に1回更新されるはずの報告書が出ないということがわかってから、当時所属していた日本広告業協会の「メディア調査研究小委員会」という組織に課題としてあげ、話し合いを始めました。

地上波も2011年にデジタル化が予定されていたため、VHFからUHFへの切り替えで視聴エリアも変わるでしょうし、ケーブル経由での視聴も増えているので、ちゃんと調べないと取引の単位となっている「世帯視聴率」の母数がはっきりしないままなのです。

メディア調査研究小委員会で話し合いを始め、関係団体の皆様とも協議を重ねました。ビデオリサーチさんの協力を得て、調査に向けた準備を進め、2014年に実査を行い、ようやくデータの配布となりました。

今回は、これまでのアド協さんの調査とは調査の方法も変わっていますが、かなり細かなところまで確認を行っています。この調査をベースに各広告会社が利用するエリア別の世帯数も更新されていくと思います。

足かけ5年のプロジェクトになってしまいましたが、言い出しっぺとしては、皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。これで、広告業協会の仕事は一区切りです。