1. マーケティング目標を把握する


先ほど、メディアプランは、「広告目標」を達成するために、必要十分な広告コミュニケーションの量を決めることだと書きましたが、「広告目標」とは、いったいなんでしょう?

「広告目標」は、広告コミュニケーションによりどのような効果を得たいのかということを表したものです。

広告の理論においては、広告の効果を媒体接触・広告接触・広告認知・銘柄認知・態度変容・購買行動の6段階でとらえています。広告主企業は、広告がどれだけ販売に結びついたのかを把握あるいは予測したいという思っているわけですが、広告による購買行動への影響を正確に調査することは非常に難しいのです。

接触の段階、すなわち広告が届いたかどうかという物理的な水準での効果は、ほぼ正確に(テレビ媒体のみ)測定できます。しかしその広告が目に止まって内容が見られたかという認知レベルの効果や、広告の受け手の考えにどのような影響があったかという態度変容の効果では、測定の正確さが薄れてしまいます。そして広告が商品の購買にどう結びつくかという行動の効果においては、インターネット広告や通信販売のように広告が販売手段となっていないかぎり、正確に測定することができないのが現状です。

広告効果

マスメディアは店頭販売が中心の広告主企業がほとんどのため、広告の目標をコミュニケーション領域に限定することが多くなりました。特に媒体目標としては、測定の容易な媒体接触・広告接触を目標とすることが多いのです。現実的に考えても、広告目標として「売上げ」を用いるのは適切ではありません。売り上げは、広告を含むマーケティングミックス全体で実現して行くべき目標(=マーケティング目標)です。マーケティング目標は、広告活動の長期的目標、目的です。広告目標はマーケティング目標を実現するためのマーケティング計画の下位目標、手段だといえるでしょう。

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広告キャンペーンの失敗する原因のほとんどは、実はこの「広告目標」がきちんと共有化されていないために起こるのです。ある人にとって「目標」であるものが、その上のレベルの人から見ると「手段」であったりと、それぞれの立場で、目的・目標・手段が連鎖していますので、自分が自分たちの目標は何なのか、きちんと確認することが大事です。

ここでいう「目的」は、長期的に追求し続ける理想的な状態。それに対して、「目標」は、目的のために達成しなければいけない明確な数値で表すことのできる目安です。

広告目標をきちんと設定することで、

(1)広告活動に関係している多くの人や機関の活動に方向付けをし、互いのコミュニケーションや調整を容易にする

(2)メディアプラン、表現計画、(評価計画)さらに実施段階などのあらゆる場面で、意志決定の判断基準になる

(3)広告活動の結果が良かったのか、良くなかったのかを判断する基準になる

などのメリットがあります。何かを「判断」する、言い換えれば、目標に対していいことなのか、悪いことなのかを決めること、のためには、必ず「目標」が必要になるのです。よくある笑い話で、広告主企業の部長が、今度の広告はだめだというときに理由を聞くと、部長の奥さんがあまりよくないと言ったから、というような話がありますね。これは、何のために広告を行うのかという「広告目標」が、広告会社と広告主企業の間で共有化されていないということです。

目的・目標と人によっていろいろな使い方をしますが、同じチーム内できちんと「広告目標」を、共有しておきましょう。できるならスタッフを全員集めたミーティングを行って、目標を紙に書いておくことです。紙に書けない、つまり言葉にできないものは、目標になりません。

 

■媒体目標の規定■

媒体目標はマーケティング/広告目標を達成するのに必要十分なコミュニケーションを量的に規定するものです。媒体目標の指標としては、投下量(GRP、R/F、有効リーチなど)が使用される場合と、生活者の反応値(広告認知率、商品認知率など)が使用される場合があります。

投下量
GRP
リーチ/フリークエンシー
有効リーチ
広告・商品認知
認知率(助成想起)
認知率(非助成想起)
認知率(トップマインド)
メッセージ認知・理解
(売上げ・利益)

★媒体目標の条件媒体目標は以下の条件を満たしていることが望ましいとされています。

1.マーケティング目標を達成できることが検証されている
過去の媒体活動の実績と売上データなどの関係から、これくらいの商品認知を獲得できれば、売上がこのくらいになる、などの検証が行われていることです。それらのデータがない場合には、類似した商品のデータなどから類推することもあります。広告主企業から訊ねられたときに一番困るポイントです。当社の場合は、自社内に商品の売上データを持っていないため、売上と媒体の関係をダイレクトに結びつけることができません。

2.予算規模が適性である
マーケティング目標を達成するためには、このくらいの認知率やGRPが必要ですと計算したところで、必要な予算が莫大なものになってしまっていては、現実的ではありません。対前年度との比較や、A vs. S(広告費対売上高)などの指標を用いて妥当な予算を設定します。

3.競合環境に対応できるレベルである
競合分析を行った結果、競合が莫大な広告投下を行っているときに、あまりにも少ない投下量を目標として設定しては、効果が期待できません。よほど、商品が優れているとか、流通上の優位性があるなどの媒体以外の要因があれば、不可能ではないですけどね。シェア・オブ・ボイスなどの指標が用いて、適正なレベルにあるかどうか確認します。

4.媒体活動実施後評価できる指標である
媒体投下を行った後に、実際にその効果を測れなければ、なんの意味もありません。きちんと測定できなければ、良かった点・悪かった点を把握して、次に活かすというフィードバックができないですね。フィードバックのない仕事は、仕事じゃありません。

とはいえ、上記のような条件がいつもそろっているとは限りません。そろっていない方が多いでしょうね。じゃあ、そう言うときはどうするんでしょう?

(広告・ブランド)認知率等の媒体目標を設定することに必ずしも意味があるわけではありませんね。それはそのカテゴリーやブランドにおいての認知率とセールスの関係が、ある程度は推測できる場合においてのみ有効なのであって、多くのケースでは認知率とは “高ければ高い程良い” ものでしかないわけです。それでも、どのくらい?と聞かれそうですが、そんな時には思い切って簡単な「目標」を設定することです。例えば、

・媒体活動と売上の関係が不明な場合、ターゲットの半数または2/3に認知させる
・競合環境を意識して、競合と同等(またはそれ以上)の広告インパクト(出稿量)を確保する
・新商品であれば、導入期にリーチを最大化する
・広告期間をなるべく継続化する
・戦略や戦術がある程度規定のものであれば、予算内でGRPを最大化する

上記のような「目標」を設定するためには、媒体戦略上の以下の要件を明らかにしておく必要があります。

季節戦略
投下スケジュール
リーチ/フリークエンシー

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