5.エリア戦略/流通・販促戦略を確認する


日本は人口の偏りが大きく、人口の半分以上が関東・関西の大都市圏に集中していまっています。そのため、地域戦略といった場合は、ほとんどの場合、人口の多い地域を優先するという結論になってしまいます。

しかし、本来は商品やサービスの地域特性を確認することにより、広告主企業の広告投資が最大の効果をあげる可能性のある市場を地域的に特定することができるのです。

地域特性を分析するには、

ブランド、カテゴリー双方の販売効率については、販売数量や売上高データに基づいて、個々の市場ごとに分析評価をします。販売効率の評価にあたっては、

BDI(Brand Development Index:当該ブランドのエリア別販売状況)

CDI(Category Development Index:当該カテゴリーのエリア別販売状況)

という二つの指数を使用することが可能です。

この考え方の前提には、(1)人が消費する量は基本的に同じである(2)人口と消費量は相関する、というふたつの考え方があります。つまり、人口の多いところではたくさんモノが売れ、人口の少ないところでは少ししか売れない、ということです。人口に比べて平均以上の販売量を実現している(一人あたり消費量の多い)市場では、BDI、CDIはともに100以上となり、逆に、BDI、CDIともに100以下の市場は需要が縮小している(一人あたり消費量が少ない)ことを示しています。

BDICDI

 

上の図は、炭酸飲料ブランドのケースです。用いたデータは炭酸飲料マーケット全体の販売金額と、同様にこのブランドの販売金額です。飲料は後述する季節戦略上からも、また店頭での棚確保の意味からもテレビ、特にスポットを重用することを前提に、エリアはテレビエリアで区切って分析しています。
CDI(横軸)を見てみると、北海道と沖縄において、1 人当たりの消費量が全国平均の1.5 ~ 1.8 倍もあります。ところがBDI(縦軸)をみると、北海道が3 倍近いのに対して沖縄は0.2 倍ほどと大きな差があります。炭酸飲料全体でみると同じように売れるエリアでありながら、このブランドの売上には大きな違いがあるわけですが、沖縄に関しては競合となる外資系ブランドが歴史的にも古くから入っており、後発ブランドの参入を許さない市場特性があるでしょう。一方、北海道は逆にそうした環境はなく、またこの企業の営業力、ブランド力も高いことが理由だと考えられます。

しかし、もうひとつ着目すべきポイントがあります。CDI の高いエリア、つまりカテゴリーが売れているエリアは北海道のみならず東北各県が多いです。そもそも冬が寒いエリアで炭酸飲料が多く飲まれていることはなぜなのでしょう。これは、冬季においてこれらエリアでは室内で強く暖房を効かせ、そのために乾燥しやすく、この時期でも炭酸飲料が止渇のために売れるのだと考えられます。このように、エリア特性一つを可視化するだけで、適正な投下エリアの規定だけでなく、後述する季節戦略のヒントにもなるのです。

このように、カテゴリーとブランドを組み合わせることによって、そのブランドの地域特性が浮かび上がってきます。それぞれの地域特性は、価格設定レベルや、販売体制、競合状況、セールスプロモーション活動、製品の品質向上努力など種々の要因が重なりあって、販売効率という結果となってあらわれています。これらの要因について正確に評価を与え、そのインパクトの程度をはかり、地域戦略の立案に十分にいかしていかなければならないのです。

市場ごとの分析から得られた結果をもとに、プランニング担当者は地域戦略を立案することが可能になります。例えば、ブランド販売力が現在強いエリアに広告宣伝を集中するという決定がくだされ、BDIが高い値を示すエリアに集中した広告投下を行う場合もあります。これとは別に、ブランド販売力を高めるにはカテゴリーの市場規模が大きいエリアで販売シェアを獲得すべきであるという場合には、CDIが高い値を示す市場に重点的に広告投下を行うことになります。

★地域別投下量を決める★

カテゴリーによっては、流通状況(例えば、百貨店でしか販売しない商品など)も考慮する必要があるでしょう。

基本的には、CDI・BDIの高いマーケットにおいて多くの投資(広告投下)を行うべきですが、各要素についての(数字上の)高低について、原因を明らかにする/判断することが、地域戦略を策定する上でのポイントです。

データの入手が困難なため、全地域について競合の投下ボリュームを地域戦略に反映させることは難しいですが、特に特定の競合ブランドが強い地域、あるいはテスト・マーケット、メディア・テストの実施時には、競合の出稿量を推定する努力をすべきです。

また、地域戦略とは、媒体プランやその広告効果に意味のある地域差異を与えることだと考えれば、±10%程度の地域間差異に対応してGRP量を変えることは意味がないともいえます。予算に限りがあれば、むしろCDIの高い地域に集中することや、(CDI・BDIだけではそのマーケット価値がはかりきれない)首都圏に集中することを検討すべきでしょう。

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